みなさんこんにちは!京都の村川です。
最近暑くなってきましたね。新緑がきれいでベランダでアイスコーヒーを飲むのが気持ちいいです。
さて、皆さんは「日本の伝統色」をご存知でしょうか。
実は私、大学時代に日本画を専攻していまして、「群青」「緑青」「銀鼠」など日本の伝統色の中でも絵の具にある色には馴染みがあります。
色は絵画だけでなく、染め織り物、建物の内装など様々な場面でそれぞれの文化・地域性に伴って発展しています。
今日は、奥深い日本の伝統色について、皆さんにご紹介していきたいと思います。
目次
- 伝統色とは
- テーマごとの色紹介
- DICカラーの指定が可能
- まとめ
1,伝統色とは
ある地域・集団の中で、古くから受け継がれてきた色彩を指します。文化特有の色彩感覚に基づいた色、また過去の歴史資料において出典がある固有の伝統的な色名称を含む場合もあります。
また、色彩文化資料として大きな役割を果たした資料に、DICグラフィックス株式会社が販売するDICカラーガイドの「日本の伝統色」シリーズがあります。 視覚文化が多様化したにもかかわらず、色彩感覚を表現する言葉が極めて乏しいことから、日本に残る伝統的な色名を見直し活用する目的で1978年から出版されています。
伝統色は、絵の具(顔料)や染料に用いられるその土地で取れる鉱物・植物などをよく反映しています。また、鴇色(ときいろ)・狐色(きつねいろ)など土地に生きている鳥・動物を表現した色など色名から親しみを感じるものも多くあります。
日本の伝統色は、各国に受け継がれた伝統色に比較して、茶色系統の色数が豊かなことも特徴です。
2,テーマごとの色紹介
では、次に実際に色を見ていきましょう。特徴をつかんでもらいやすいようにテーマごとに紹介していきます。
(*お使いのモニターによって色の見え方には差があります。)
現代でもおなじみの色
群青(ぐんじょう)
深みのある紫みの濃い青色です。小学校の水彩セットにも入っていることがあり、ご存知の方も多いかもしれません。歌のタイトルにもあったりします。由来は宝石としても使われる鉱物、瑠璃(ラピスラズリ)や藍銅鉱(アズライト)を砕いて用いていた日本画の岩絵の具です。
ちなみに洋画でもラピスラズリを使ったウルトラマリンという色があります。画家フェルメールがふんだんに用い、フェルメール・ブルーと言われる大変高価な色です。
紺色(こんいろ)
暗い紫みの青です。藍染の中でも特に濃い色を指します。英名のネイビーブルーに当たる色でこちらも日常生活で身につけることも多いかもしれません。
朱色(しゅいろ)
黄みの強い赤色を指します。学校の先生が答え合せで使う鉛筆の色で馴染みがある色ですね。日本画の絵の具で辰砂(しんしゃ)という鉱物を砕いた色が由来です。染料に使われたのは昭和の初めで比較的近代です。
植物・自然物由来の色
支子色/梔子色(くちなしいろ)
浅い黄色です。クチナシの花の白・・・ではなく、クチナシの実から採れる染料で染めた色です。クチナシ色素は漬物・飲料など食料品にも用いられます。
小麦色(こむぎいろ)
にぶい黄味のオレンジです。日焼けした健康的な肌の色を指すときに「小麦色の肌」と言ったりしますね。小麦の籾(もみ)を表現した色です。
薔薇色(ばらいろ)
濃いピンク色。その名の通り薔薇の花を表現した色です。健康的な赤味のさした肌などを「ばら色のほほ」と言ったりもします。「ばら色の時代」という表現は幸福を意味したりと、ポジティブなイメージがある色です。
染料・着物文化由来の色
藍色(あいいろ)
緑みの青色です。藍染による色でもあります。言わずと知れた日本の伝統色ですが、時代によって色味は異なります。ジャパン・ブルー/ヒロシゲ・ブルーなどと海外にも広く知られている現代の藍色は、江戸時代以降に生まれたものです。
一斤染(いっこんぞめ)
桜色(さくらいろ)に近い淡いピンクです。紅花一斤で絹1匹(二反)を染めたことからついた伝統色で染料の単位が名前に由来します。
人名由来の色
団十郎茶(だんじゅうろうちゃ)
赤味の茶色を指します。大人気だった歌舞伎役者・市川団十郎が代々身につけた色です。歌舞伎界では原料から「柿色」「柿渋色」とも呼ばれます。江戸時代にはこの団十郎茶のほか「璃寛茶(りかんちゃ)」「路考茶(ろこうちゃ)」など歌舞伎役者にちなんだ様々な茶色が流行しました。
利休茶(りきゅうちゃ)
あせた緑みの茶色です。茶の湯を大成させた千利休が好んだ色とされています。その他にも利休白茶、信楽利休、利休鼠、利休生壁など緑がかった色には、茶葉の緑にちなんで「利休」とつけられた色がたくさんあります。
憲法色(けんぽういろ)
暗いくすんだ茶色です。日本国憲法の表紙の色・・・などではなく吉岡憲法という剣術家が好んだ服の色だそうです。憲房色・吉岡色とも呼ばれます。
紛らわしい色(読みが同じ色など)
亜麻色(あまいろ)
やさしい茶色、ベージュです。亜麻布が生成りした色から由来します。「亜麻色の髪の乙女」(もともとはフランスのルコント・ド・リールの詩の一説だそう)という有名な曲がありますね。
天色(あまいろ/あめいろ)
晴天のような澄んだ青色。真空色(まそらいろ)の別名もあります。空色(そらいろ)より濃い色ですが、同じ字(天色)でそらいろと読むときは空色と同じ色を指す・・・など書くだけで混乱しそうな曲者の色ですので、指示の際はご注意を。*DIC日本の伝統色にはありません。
飴色(あめいろ)
深みのあるオレンジ色。透き通った飴の色を指します。「玉ねぎを飴色になるまで炒める」という表現でおなじみですね。
栗皮色(くりかわいろ)
暗い茶色。栗の外皮の色です。後述の皂色(くりいろ)と区別してこう言われるようになりました。
蒸栗色(むしくりいろ)
薄い黄色。栗の果肉(中身)の色です。日本の伝統色には食べ物の名前が関係する色がけっこうあります。美味しそうですね・・・。
皂色(くりいろ)
茶色みの黒色。黒土の色です。栗色ではないが栗・はしばみのようなタンニンを多く含む材料で草木染めで濃く出して表現することもできるそうです。
若芽色(わかめいろ)
明るい黄緑。海藻のワカメ・・・ではなく若い草の芽の色なのでご注意を。ちなみに海藻由来の海松色(みるいろ)という色もあります。こっちはワカメっぽいですね。
3,DICカラーの指定が可能
さて、実際にご注文の際には気をつけていただきたいことがございます。
日本の伝統色に限らずご注意いただきたい点なのですが、皆さんのご覧になっている画面の色と私の見ている画面、また印刷物の出力機ごとに色の表現は同じデータを用いていても異なってしまいます。
媒体による見え方の変化や、それに伴うトラブルの避け方、色合わせについては以前の知恵袋でもご紹介させていただきましたので、詳しくはこちらの記事をご覧ください。↓
色番号を指定しよう!~②印刷物とモニターの色の見え方の違い~
微妙な色の変化が美しく叙情的な日本の伝統色ですが、実際に印刷する際にはイメージと違うものができるのを防ぐため、
日本塗料工業会(日塗工)様やDICグラフィックス株式会社(DIC)様の色見本帳よりご指定ください。
日本の伝統色に関しては、DICの「日本の伝統色」シリーズの色見本帳をフジタでも所有しておりますので、ぜひ利用ください。
(ちなみに「フランスの伝統色」見本帳も持っております。)
4,まとめ
いかがだったでしょうか。日本の伝統色は1000色余りとも言われ、今回ご紹介できなかった色もまだまだあります。
日本の伝統色にはくすみ系の色も豊富で、建築にも馴染みの良いカラーのアイデアが豊富に含まれています。
皆さんもひと味違ったサインをご希望の際にはぜひ日本の伝統色をお考えください。
【参考】
DICグラフィックス株式会社「DICカラーガイド色見本帳 日本の伝統色第8版」